はじめに
「調理師は給料が安い」──このイメージは、多くの人が抱いています。実際に、調理師志望の高校生や、転職を検討する現役調理師からも「給料に見合わない」という悩みをよく耳にします。
しかし、本当に調理師の給料は安いのでしょうか?実は、この質問に対する答えは「職場によって大きく異なる」というのが正解です。
この記事では、厚生労働省の最新統計データを基に、調理師の実際の給料水準、職種別・職場別の給与差、そして給料を上げるための具体的な戦略を紹介します。
「今の給料に満足していない」という方や「調理師への転職を検討している」という方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
調理師の平均年収 — 統計データから見える実態
全体的な給料水準
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、調理師・料理人の平均年収は約359万円です。月収にすると約27万円、ボーナスは年間約32万円となっています。
一方、求人ボックスの2026年3月時点の統計では、調理師の正社員平均年収は376万円となており、若干の上昇傾向が見られます。
この数字だけを見ると「給料が安い」と感じるかもしれませんが、全業種の平均年収(約432万円)と比較すると、確かに50~70万円程度低いのが実態です。
年齢・経験による給料の変化
調理師の給料は、経験年数と年齢に大きく左右されます。
- 20代新人(0~3年):月給16~18万円(年収192~216万円)
- 20代経験者(3~5年):月給20~24万円(年収240~288万円)
- 30代調理主任:月給24~30万円(年収288~360万円)
- 調理長・料理長:月給30~45万円以上(年収360~550万円以上)
つまり、新人時代は給料が低いものの、キャリアを積むことで給料は大幅に上がる傾向があります。
職種別・職場別の給料比較表
調理師の給料は、勤務先の業態によって大きく異なります。以下の表は、各職場での平均月給と年収をまとめたものです。
| 職場区分 | 月給 | 年収(賞与含む) | 特徴 | 適性 |
|---|---|---|---|---|
| 高級レストラン・フレンチ | 26~35万円 | 312~420万円 | 技術習得に最適、やりがい大 | 料理技術を磨きたい人 |
| 大手ホテル(シティホテル) | 25~40万円 | 300~480万円 | 福利厚生が充実、経営が安定 | 安定と学びを両立したい人 |
| 中級ホテル・リゾート | 22~32万円 | 264~384万円 | 経験できる料理が豊富 | 複数ジャンルを学びたい人 |
| 学校給食センター | 19~26万円 | 228~312万円 | 安定、残業少、休日多い | 仕事と生活を両立したい人 |
| 病院・福祉施設調理 | 18~25万円 | 216~300万円 | 社会貢献、安定 | やりがい重視の人 |
| 老人ホーム調理補助 | 16~22万円 | 192~264万円 | 残業なし、肉体負担軽い | ワーク・ライフ・バランス重視 |
| 社食・企業給食 | 20~28万円 | 240~336万円 | 大量調理、安定性高い | 手厚い福利厚生を求める人 |
| フランチャイズ飲食店 | 18~26万円 | 216~312万円 | 昇進が早い場合も | 成長志向の人 |
重要な見落としポイント: 上表の「年収」は、基本給+手当+賞与を含めた概算です。企業規模、地域、個人の経験によって大きく変動します。
給料が安く見える理由 — 調理師の給与体系の特徴
理由① 基本給に対して手当が少ない
調理師の給料が低く見える最大の理由は、基本給の割合が高く、手当の種類が少ないことです。
例えば、営業職や管理職であれば、基本給+営業手当+住宅手当+管理手当など、複数の手当で構成されていることが多いです。一方、調理師の場合は、基本給+調理手当(ある場合)程度で構成されていることが多く、手当の追加でカバーできる余地が限定的です。
理由② 新人時代の給料が極めて低い
調理の世界では、新人教育に時間をかけることが多いため、最初の1~2年は給料が低く設定されています。新人時代は月給14~17万円程度というケースも珍しくありません。
しかし、3年目以降は給料が大きく上がるため、「平均年収」を計算する際に新人が多く含まれる企業では、平均値が下がってしまうのです。
理由③ ボーナス(賞与)が少ないか、ない企業も多い
特に小規模の飲食店では、ボーナスがほとんど支給されないか、年1回の支給に限定されていることがあります。大手ホテルでは年2回2~3ヶ月分の賞与が出ることが多いのに対し、個人経営の飲食店では「賞与なし」というケースも少なくありません。
理由④ 長時間労働の割に残業代が少ない
調理師の労働環境の特徴として「長時間労働」が挙げられます。朝6時から夜10時までの16時間拘束(うち休憩時間含む)という職場も珍しくありません。
しかし、飲食業界全体に「残業代を支払わない」または「みなし残業制」で固定化している企業が多いため、実際の労働時間に見合った給料が支払われていないケースが多いのです。
違法な残業代未払いに関しては、厚生労働省への相談や労働基準監督署への通報が可能です。詳しくは、当ブログの別記事「調理師の残業手当、もらえてない人が多すぎる件|違法ケースと対処法」をご参照ください。
給料が高い調理職場の特徴 — 5つのチェックリスト
同じ調理師でも、職場選びによって給料は2倍以上変わることもあります。給料が高い職場には、共通の特徴があります。
特徴① 大手企業グループに属している
大手ホテルチェーン(帝国ホテル、ヒルトン、マリオット等)や大手給食企業(シダックス、グリーンハウス等)では、給料体系が整備されており、昇進・昇給のルールが明確です。結果として、同じ調理師でも個人経営飲食店よりも10~20万円程度月給が高いことが多いです。
特徴② 正社員雇用が原則で、福利厚生が充実
給料が高い職場は、正社員雇用を原則としており、健康保険・厚生年金・有給休暇・育児休暇・退職金制度などの福利厚生が充実しています。これらの福利厚生を「給与換算」すると、実質的な年収はさらに高くなります。
特徴③ 昇進・昇給のルールが明確
給料が高い企業では「3年目で調理主任昇進+月給3万円昇給」「5年目で調理長昇進+月給5万円昇給」といったキャリアパスが明確に示されていることが多いです。
一方、個人経営飲食店では「頑張った分だけ昇給する」という曖昧なルールになっていることが多く、実際には昇給がほとんど行われないというケースも珍しくありません。
特徴④ 基本給が高く、賞与が年2回以上支給される
給料の「質」を見る際に重要なのは「基本給の高さ」と「ボーナスの支給回数」です。
- 給料が高い職場:基本給24万円以上 + 賞与年2回以上(合計3~4ヶ月分)
- 給料が低い職場:基本給16~18万円 + 賞与なしまたは年1回
この違いだけで、年間100万円以上の差が出ることもあります。
特徴⑤ 残業代が適切に支払われている
給料が高い企業では、残業代が「時給×1.25倍」で正確に計算され、給与明細に明記されています。
一方、給料が低い企業では「みなし残業(固定残業代)」という制度で、月給に残業代が含まれていることが多く、実際の残業時間がそれを大幅に超えても追加支払いがないというケースが多いです。
調理師の給料を上げるための3つの戦略
戦略① キャリアアップして調理長・料理長を目指す
調理師の給料を上げるための最も確実な方法は、キャリアを積んで調理長や料理長などの管理職に昇進することです。
キャリアパスの一例:
- 0~1年:新人調理師 → 月給16万円
- 1~3年:調理師 → 月給20万円
- 3~5年:調理主任 → 月給25万円
- 5年以上:調理長 → 月給30~35万円以上
5年で月給が倍近く上がる可能性があります。ただし、このキャリアパスが実現するかどうかは、企業の「人材育成体制」にかかっています。
調理長昇進を目指す際のポイント:
- 面接時に「キャリアパスの明確さ」について質問する
- 現在の調理長がどのくらいの期間で昇進したかを確認する
- 年1回以上の昇給が約束されているかを確認する
戦略② 給料が高い職場へ転職する
同じ調理師でも、職場によって月給は10~20万円変わることがあります。給料の低い職場から給料の高い職場への転職は、最も効果的な給料アップ方法です。
給料が高い職場の見分け方:
- ホテル・高級レストランなど、企業規模が大きい
- 求人票に「基本給23万円以上」と明記されている
- 「年2回の賞与支給」が記載されている
- 「みなし残業なし」と明記されている
- Google マップやOpenworkの口コミ評価が4.0以上
転職を検討する場合は、複数の転職サイトで求人を比較し、給料・福利厚生・労働環境が自分の基準を満たしているかを確認することが重要です。
調理師専門の転職サイトを活用することで、給料交渉や職場の詳細情報を事前に確認できます。
フーズラボでは、給料が高い職場の求人が豊富で、キャリアアドバイザーに給料交渉をサポートしてもらうことも可能です。
戦略③ 資格取得やスキルアップで付加価値を高める
調理師免許を取得している場合でも、追加資格やスキルを身につけることで、給料交渉の際の交渉材料になります。
給料を上げるのに役立つ資格・スキル:
- 栄養士資格 → 月給+3~5万円(給食施設での昇進時)
- 食品衛生責任者資格 → 月給+1~2万円(飲食店での昇進時)
- HACCP管理資格 → 月給+2~3万円(大手企業での優遇)
- 料理技術の高度なスキル(フランス料理、日本料理の高度な技術)→ 月給+5~10万円
- 言語スキル(英語など) → 月給+3~5万円(ホテルでの評価)
これらの資格やスキルは、単に現職での給料アップに留まらず、より良い職場への転職の際の強い武器になります。
給料の実態 — 職場別・地域別の具体例
具体例① 東京のシティホテル調理師
職位: 調理師(勤続3年)
基本給: 27万円
手当: 調理手当2万円、夜間勤務手当1.5万円
月収: 30.5万円
年収: 約366万円(賞与年2回、各2.5ヶ月分)
メリット: 給料が安定、福利厚生が充実、技術習得の環境が整っている
デメリット: 人間関係が厳しい、長時間労働
具体例② 地方の学校給食センター調理師
職位: 調理師(勤続5年、調理主任)
基本給: 23万円
手当: 調理手当1.5万円、家族手当1万円
月収: 25.5万円
年収: 約306万円(賞与年2回、各1.5ヶ月分)
メリット: 残業が少ない、休日が多い、仕事と生活が両立しやすい
デメリット: 給料が低め、料理技術の習得機会が限定的
具体例③ 個人経営の高級フレンチレストラン調理師
職位: シェフ(勤続8年)
基本給: 32万円
手当: なし
月収: 32万円
年収: 約384万円(賞与なし)
メリット: 料理技術を極められる、やりがい大、顧客との関係が深い
デメリット: 長時間労働、賞与なし、経営不安定のリスク
具体例④ 老人ホーム調理補助(正社員)
職位: 調理補助(勤続2年)
基本給: 18万円
手当: 調理手当1万円
月収: 19万円
年収: 約228万円(賞与年1回、1ヶ月分)
メリット: 残業なし、肉体負担が少ない、有給休暇が取りやすい
デメリット: 給料が低い、料理技術習得の機会が少ない
給料が低い理由を理解することの大切さ
ここまで読んでいただければ、お分かりかと思いますが、「調理師の給料が安い」という一般的なイメージは、実は「個人経営飲食店や小規模企業での給料水準」を基準にしているというのが実態です。
大手企業やホテルでの調理師の給料は、決して低くはありません。むしろ、同年代のサラリーマンと同程度か、それ以上の給料を得ている調理師も多いのです。
重要なのは、「どういった職場を選ぶか」です。給料が低い職場に甘んじるのか、給料が高く、労働環境が良い職場を目指すのかで、人生全体の経済状況は大きく変わります。
給料アップを実現するための次のステップ
もし現在、給料に満足していない場合は、以下の3つのステップを実践してください。
ステップ① 今の給料が「市場相場」と比べて低くないか確認する
転職サイトで同じ職種・経験年数・地域の求人を複数見て、給料の相場を把握してください。
フーズラボでは、調理師向けの求人が数多く掲載されており、給料相場を簡単に確認できます。
ステップ② 給料が低い理由を分析する
現在の給料が低い理由が「経験不足」なのか「職場の経営規模」なのか「業態」なのかを、本記事の「給料が高い職場の特徴」と照らし合わせて分析してください。
ステップ③ キャリアアップか転職かを決める
分析結果に基づいて、現在の職場でキャリアアップを目指すのか、給料が高い職場への転職を検討するのかを決めてください。
転職を検討する場合は、複数の転職サイトを活用し、給料・福利厚生・労働環境を総合的に判断することが重要です。
フーズラボと栄養士ワーカーを併用することで、給料が高く、労働環境が良い職場を見つけやすくなります。
調理師の給料に関するよくある質問
Q1:調理師の給料が安い理由は何ですか?
A:主な理由は、①新人時代の給料が極めて低い、②ボーナスが少ないか支給されない企業が多い、③残業代が支払われないケースが多い、④小規模飲食店での給料水準が業界全体の平均を引き下げている、という4点です。
Q2:調理師で月給30万円以上稼ぐことは可能ですか?
A:はい、十分可能です。調理長や料理長クラスであれば月給30~45万円以上を得ている調理師も多いです。また、大手ホテルの調理師であれば、経験年数が3~5年で月給28~35万円を得ることも十分可能です。
Q3:給料を上げるために、今からできることは何ですか?
A:①資格取得(栄養士、HACCP管理資格)、②スキルアップ(高度な料理技術の習得)、③給料が高い職場への転職、④現在の職場での昇進を目指す、といった方法があります。
Q4:給料が高い職場はどうやって見分けますか?
A:①企業規模が大きい、②求人票に基本給23万円以上と明記されている、③年2回以上の賞与支給が記載されている、④Googleマップやopenworkの評価が高い、といった特徴があります。
Q5:転職で給料を上げることはできますか?
A:はい。個人経営飲食店から大手ホテルへの転職であれば、月給で10~20万円程度の引き上げが期待できます。ただし、転職前に給料、福利厚生、労働環境を十分に確認することが重要です。
まとめ:給料は職場選びで決まる
調理師の給料が「安い」のか「高い」のかは、職場によって大きく異なります。平均年収が359~376万円というデータは、給食センターから高級ホテルまで、あらゆる職場を含めた平均値だからです。
重要なポイントは以下の3つです:
- 経験年数でキャリアを積むことで、給料は大幅に上がる(新人16万円 → 調理長30万円以上)
- 職場選びで月給が10~20万円変わる(個人店18万円 → ホテル28万円)
- 給料が高い職場には共通の特徴がある(大手企業、明確なキャリアパス、充実した福利厚生)
「調理師は給料が安い」と諦めるのではなく、給料が高い職場を目指し、キャリアを計画的に築くことで、十分に安定した経済生活を実現することは可能です。
今の給料に満足していない場合は、本記事の「給料アップの3つの戦略」を参考に、具体的なアクションを起こしてください。
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また、具体的に給料が高い職場を探したい場合は、調理師専門の転職サイトの利用をお勧めします。

