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調理師の給料はなぜ安い? 現役調理責任者が業界構造と年収アップの現実解を語る

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手取り18万は珍しくない

給料日に明細を見て、思わずため息が出たことはないでしょうか。

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」では、調理師の平均年収は約350万円前後です。全産業の平均年収は約460万円なので、差はおよそ110万円あります。月に直すと、約9万円少ない計算です。

僕がホテルに入った1年目の手取りは、月16万円台でした。朝5時に出勤して23時に退勤。時給に置き換えれば700円を切っていたと思います。料理が好きだから続けていたものの、その気持ちだけで生活を回していた時期でした。

調理師の給料がここまで低くなりやすいのは、会社ごとの問題だけではありません。業界全体に共通する理由があります。

調理師の給料が安い5つの理由

1. 飲食業界は利益率が低い

飲食店の売上は、原材料費に30〜35%、人件費に30〜35%、家賃に10%前後、光熱費や雑費に10〜15%かかります。営業利益として残るのは5〜10%ほどです。

月商500万円の店でも、利益は25〜50万円程度。そこから設備投資や借入の返済があれば、昇給に回せるお金はほとんど残りません。給料を上げたくても、原資がない。これが現場の実情です。個人の頑張りではなく、商売の形そのものが給料を上げにくくしています。

2. 修行文化がサービス残業を当たり前にしてきた

技術は見て覚えろ、若いうちは給料より経験。こうした考え方が長く業界に根づいてきました。その結果、長時間働くことが熱意の証のように扱われ、残業代を求めること自体が言い出しにくい空気になりました。

飲食店では、みなし残業制を採用しているところも多くあります。月30時間分の残業代が基本給に含まれていても、実際の残業は60〜100時間ということも珍しくありません。差額の30〜70時間分は、実質的に未払いです。時給1,200円で計算すれば、月3.6〜8.4万円がそのまま消えていることになります。

3. 参入しやすく、賃金が上がりにくい

あまり知られていませんが、厨房で働くのに調理師免許は必須ではありません。飲食店は食品衛生責任者が1名いれば営業でき、現場スタッフ全員に資格が求められるわけではありません。

つまり、調理の仕事には入りやすい。人が集まりやすい仕事は、賃金が上がりにくくなります。高い技術を持っていても、業界全体の平均に引っぱられ、給与水準が低く抑えられやすい構造があります。

4. 小規模な店が多く、昇給の仕組みが弱い

総務省の経済センサスによると、飲食サービス業の事業所の約9割は従業員10人以下です。こうした店では、人事評価制度も昇給テーブルも整っていないことが珍しくありません。給料はオーナーの判断で決まり、頑張ったから上げる、売上が落ちたから据え置く、といった決め方が普通に行われます。

大企業なら定期昇給や労働組合がありますが、飲食業界には賃金を守る仕組みが少ない。何年働いても給料がほとんど変わらないのは、そのためです。

5. やりがいが我慢の理由にすり替わりやすい

料理が好きだから続けたい。お客様の笑顔が見たい。その気持ちは本物ですし、僕もよく分かります。ただ、その思いが低賃金を受け入れる理由に変わってしまうことがあります。

好きな仕事だから辞めにくい。辞めにくいから交渉しない。交渉しないから給料が上がらない。この流れが業界全体で続いている限り、賃金水準はなかなか変わりません。

業態ごとに見る年収の違い

同じ調理師でも、どこで働くかで年収はかなり変わります。下の数字は、求人データと業界相場をもとにした目安です。

業態経験3年目経験5年目経験10年目管理職(料理長クラス)
シティホテル・リゾートホテル280〜320万円320〜380万円380〜450万円500〜700万円
高級レストラン・専門料理店270〜310万円310〜370万円370〜440万円480〜650万円
給食会社(病院・学校)260〜300万円300〜340万円340〜400万円400〜500万円
福祉施設(老人ホーム等)250〜300万円290〜340万円330〜390万円380〜450万円
チェーン店・ファミレス260〜290万円290〜330万円330〜380万円400〜480万円
個人経営の飲食店230〜270万円260〜310万円300〜360万円オーナー次第

特に目立つのは、個人店とホテルで経験10年目の時点ですでに80〜90万円ほど差が開いていることです。管理職まで進めば、その差は100〜200万円以上になることもあります。年収は、どれだけ頑張るかだけでなく、どこで働くかに強く左右されます。

ホテルと福祉施設の働き方の違いは、別の記事でも比較しています。
ホテル調理師 vs 老人ホーム調理師 — 給料・労働環境・キャリアで徹底比較

年収を上げる5つの現実的な方法

1. 業態を変える

年収を動かすうえで、いちばん早いのは業態を変えることです。スキルや経験年数が同じでも、働く場所を変えただけで年収が50〜100万円上がることは珍しくありません。

個人店で年収280万円だった人が、ホテルや大手給食会社へ移って年収350〜380万円になることは普通にあります。僕自身、ホテルから福祉施設へ移ったとき、年収そのものは少し下がりましたが、残業が月80時間減ったため、時給換算では大きく改善しました。額面だけでなく、働いた時間に対していくらもらえているかも見たほうがいいです。

飲食業界に特化した転職サイトを使うと、業態ごとの条件を比べやすくなります。
調理師におすすめの転職サイト5選を見る

2. 役職を上げる

給料を上げるには、調理技術だけでなく、厨房を回す力も必要になります。評価されやすいのは、原価管理、シフト管理、衛生管理、新人教育の4つです。

原価をFL比率で見られる、人件費を意識してシフトを組める、HACCPに対応できる、新人を育てられる。こうした力があると、単なる調理スタッフではなく、現場を任せられる人材として見られます。

副料理長なら年収400〜450万円、料理長なら500〜600万円が一つの目安です。料理が上手いだけでは届きにくくても、厨房全体を動かせるようになると、給与テーブルが一段上がります。

3. 資格手当を積み上げる

資格手当は派手ではありませんが、毎月確実に給料へ乗ります。積み上げると意外に効きます。

資格手当相場(月額)年間インパクト
専門調理師5,000〜10,000円6〜12万円
ふぐ調理師5,000〜15,000円6〜18万円
管理栄養士10,000〜20,000円12〜24万円
製菓衛生師3,000〜8,000円3.6〜9.6万円

複数持っていれば、月2〜4万円ほど上乗せされることもあります。特に管理栄養士は、福祉施設や給食会社での需要が高く、仕事の選択肢も広がります。

4. 転職時に条件交渉をする

給料交渉は苦手な人が多いですが、転職のタイミングは条件を見直してもらいやすい場面です。ポイントは、自分の市場価値を数字で伝えることです。

今の年収はいくらか。どんな経験があるか。その経験を応募先でどう活かせるか。そこを言葉にできるだけで、印象は変わります。たとえば、現在の年収は○○万円で、御社では△△の経験を活かして□□に貢献できるため、年収○○万円を希望します、という形です。

自分で言いにくいなら、転職エージェントに任せるのが確実です。企業との年収交渉に慣れているので、自分では切り出しにくい金額でも話を進めやすくなります。
フーズラボの評判・口コミは?本音レビュー

5. 副業で収入源を増やす

本業だけに頼らず、収入の入口を増やす考え方もあります。調理師の経験を活かせる副業には、レシピ開発、料理写真の撮影、フードライター、出張料理、料理教室などがあります。

ただし、副業は本業の土台が整っていてこそです。残業が月80時間を超えている状態で始めると、体を壊しかねません。先に本業の環境を立て直すことが必要です。

給料が安いから辞めたいと思うのは自然なこと

ここまで読んで、やっぱり辞めたいと感じたなら、その感覚はおかしくありません。働いた分の対価を求めるのは、甘えでもわがままでもないからです。

僕がホテルから環境を変えたとき、周りからは、もったいない、逃げだと言われることもありました。でも実際には、睡眠時間が毎日2時間以上増え、休日に家族と過ごせるようになり、料理を楽しむ余裕も戻りました。年収だけ見れば下がった時期もありましたが、時給換算と生活の質まで含めると、結果は明らかにプラスでした。

辞めたいのに辞められないと感じているなら、退職代行という選択肢もあります。
調理師が退職代行を使うのはアリ?完全ガイド

心の疲れが強いときは、こちらの記事も読んでみてください。
調理師のメンタルヘルスと心の疲れ — 限界サインの見つけ方と今日からできる対策

安い理由を知ったうえで、どう動くか

調理師の給料が安くなりやすいのは、能力が低いからではありません。利益率の低い業界構造、修行文化によるサービス残業、参入しやすさ、小規模事業所の多さ、やりがいが我慢に変わりやすい空気。その積み重ねで、賃金水準が低く抑えられています。

この構造そのものを一人で変えるのは難しくても、その中で自分がどこで働くかは変えられます。業態を変える、役職を上げる、資格を取る、交渉する、副業を持つ。どれか一つでも動けば、年収は変わり始めます。

最初の一歩は、今の自分にどんな選択肢があるかを知ることです。

まずは自分の市場価値を知る

飲食特化の転職エージェントに登録すると、今の経験で狙える年収の幅が見えてきます。まだ辞めると決めていなくても問題ありません。情報収集だけでも、次の動き方はかなり変わります。

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アラフォーの調理師・二児の父。専門店、大量調理、レストラン、リゾートホテルを経て、現在は調理責任者。長時間労働で心身を崩し、転職で働き方を立て直した経験があります。同じ悩みを抱える調理師に向けて、転職、職場選び、働きやすい環境の見つけ方を現場目線で発信しています。